最近お仕立てしたお洋服 1

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色々な生地と仕立て方

最近お仕立てしたお洋服のうち、写真が残っているお洋服について集めてみました。Zegnaが多くなっています。Zegnaでのお仕立ては一部なのですが、なぜか残っている写真のものはZegnaの服が多いという不思議です。これからは、他メーカーの生地を使ったものについても、足していきたいと思います。ただ、ほとんど人台になり、サイズに合わなかったり少し分かりにくいものになっています。

Sea Island Cotton 100% Jacket

Sea Island Cotton, 海島綿 100%のジャケットです。海島綿のジャケット生地も随分と希少なものになってきました。古き良き生地が入手困難になるのは、なかなか寂しいものがあります。

このジャケットはお客様のご希望による実験的デザインです。ショールカラーをベースにしてノッチラペルにしています。言葉で表し難いにも関わらず、デザイン上の特徴は一目瞭然という不思議なジャケットです。

綿ジャケットでありながら海島綿独特の光沢があり、タキシードのようなデザインでありながらカジュアルとして着用できるという、とても面白いデザインになりました。

三枚とも同じ服の写真…なのですが、同じ服とは思えないほど、なぜこんなに写り方が違うのでしょう。写真は相変わらずとても難しく思います。

09/07/30

Lanvin Pure Escorial 100% Suit

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一見するだけでは至って普通の生地にしか見えません。「着用者だけが分かる生地」とも呼ばれる Pure Escorial Wool 100% のスーツです。滅多に入手できない希少性の高い生地です。

この生地は縫製が厄介ですが、強撚,熱塑性力,伸縮性に富みますので、体のラインにそった曲線が奇麗に出ます。特に衿の返りが奇麗に出たと思います。

良い生地ですので、オーソドックス,基本に忠実に行いました。全体に細く見えるカッティング = 縦に長く見える裁断にしています。

…それにしても、写真はなぜこんなに難しいのでしょう。逆光になるのがダメなのでしょうか。少し悔しく思います。

09/07/30

Silk Skin

生地はZegna Silk & Cotton、手縫いの非構築的(アンコン,unconstructed)ジャケットです。49%が綿ですが、シルクの混合であるため植物繊維の風合いが抑えられています。滑らかで光沢があり、シルク混合で若干弱いものの、高級感と質感を備えています。

アンコンは言うものの、毛芯を使っています。軽さが眼目ですから、特殊なメッシュ毛芯を用いています。植物繊維が使われた生地にも関わらず、かなりアンコンに見えにくく出来ました。もしアンコンとお気づきになられなかったら、とても嬉しく思います。

肩はナチュラル・ショルダー、ラペルは細めです。全体的に縦の方向を強調しつつも、生地の色柄でエレガントな雰囲気も出ています。清涼感を出すため、ボタンは白蝶貝、写真では分かりにくいのですがオール ハンド ステッチです。

基本的に裏はありません。柄裏地はお客様の選択によるもので、とても品よく面白みのあるものになりました。恐らく、他には滅多にないアンコンに仕上がったと思います。

08/04/28

今年も麻のジャケット

一年おきに何かしら麻のジャケットを試しているような気がしつつ、今年もやっぱり作ってしまいました。今年の目標はとにかく軽くて薄い、つまり涼しいジャケットです。

生地は国産(TOSCO)の麻(ラミー)です。リネンが普通ですが、敢えてラミーです。ラミーは品質の上下幅が非常に広く、悪いものは何ともなりませんが、良いものはリネンを上回ります。強い光沢と細い繊維、強靱性が特徴です。今回の目標にぴったりの生地です。

縫製は機械+手縫のアンコンです。裏もありません。生地の薄さと相俟って、向こうが透けて見えます。アンコンですが、芯に広見返しのメッシュ毛芯を使っています。植物繊維の生地は「紙」の印象になりがちです。それを避けるためには芯を使った方が見栄えがします。

08/04/13

バンブー・カシミアのアンコン

お客様からお写真を頂きました。ありがとうございます。このジャケットはZegnaのBamboo&Cashmereです。植物繊維(竹)の混合ですが、カシミア混合であるため非常に滑らかで上品な印象があります。非常に広範に着て頂けると思います。

構造はアンコンですが、巾の狭いアンコン用途に作った毛芯を使いましたので、アンコンにも関わらず曲線とボリュームが出せたと思います。アンコンは構造よりも素材が命のところがありますが、やっぱり良い生地を使うなら、出来る限り構造も考えたいですね。

ジーンズにラフな着こなしのシャツとの組み合わせで、ワイルドに決まってます。こういう着こなし方は、私には難しいですので、とても羨ましく思います。ラフ、ワイルドというのは、ある意味、上品/洗練よりも難しいものがありますね。

撮影場所は当店の前、咲いている花は桃です。細い若木がいつのまにやら立派な花を咲かせるようになりました。

08/04/07

Zegna Japanのパーティ?

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整理していたら色んな写真が出てきました。これはZegnaのパーティです。Leonの岸田元編集長とご一緒させて頂きました。小さなテーラーがこの手の集まりに参加することはまずないのですが、不思議なことに招待を頂きました。Zegna Japan 社長の交代パーティです。

かなり色々な方、特に業界の方が多かったように思います。…同業者と会うのも面白いですが、「業界」の方々は一風変わっています。かなり考え方が違っていて、とても面白いものがありました。

05/12/05

ウール100% ジャケット

Zegna Trofeo のジャケット、手縫いです。柄はグレンチェックです。肩パッドがないドロップショルダーで、袖は雨振り。全体的にかなり柔らかくなっています。

…人台に掛けて写真を撮ると、なぜか服の特徴が抑制されて見える気がするのですが、なぜなのでしょう。ラペル周辺がかなりシャープになっており、カジュアル・ジャケットにも関わらず上品です。

裏はタマムシ(玉虫)です。旭化成のベンベルグで、不思議な光沢を持っています。写真ではどんな色なのか判然としませんが、見る方向によって色目が変わります。その一方で上品さがあるという、何だか不思議な裏地です。

目視でも何色とは特定できず、まさに玉虫という風合いなのですが、写真ではどう頑張っても雰囲気が出ず残念です。

08/04/28

ウェストを強く絞り縦を

Zegna Trofeo生地で手縫いになります。肩幅がかなり狭く、ナチュラル・ショルダーです。Vゾーンは若干高め、腰の絞りも強めです。絞りが強いため、腰あたりのフレア感が強くなります。裾 (フロントカット,front cut) は大丸 (カッタウェイ, Cut Away) です。

全般的にAの形に近くなり、縦の長さを強調するものになるため、大丸で丈を短く見せています。総体的に活動的な印象も併せ持つデザインになります。紺無地ですから幅広く使えます。生地が紺無地、裏地も同系色ですから、若いリクルートの方や、春秋に富んで将来あるフレッシュマンには最適と言えるかもしれません。

このデザインでも、生地の色柄や素材を変えると、またかなり変わった印象に変化します。お客様自らデザイナーとなってイメージを固めて頂いても、私共を便利に使って頂きまして、どうぞ楽しんで頂けましたら幸いです。

08/04/24

大丸, Cut Away Fron

Zegna Trofeo生地の手縫いスーツです。襟幅は現在の流行より若干広め、写真では分かりにくいものの、袖もかなり細くなっています。肩は構築的、ナチュラル・ショルダーです。裾の開きが広いですが、仕立屋はこれを長く「大丸」と呼んできました。最近ではカッタウェイ(Cut Away)と呼ばれる方も多くなってきました。最近カッタウェイは随分と多くなっています。

これは腰のデザインの流行と関係しています。ハイウェストでしぼりがきつい場合、縦方向の長さを強調するため、丈が長く見えます。特に肩幅が狭いと更に縦方向に長く見えます。縦方向に長く見えると礼服の印象に近づき、エレガントではあるものの、活動的な印象がありません。そこでカッタウェイにすることによって、丈を短くみせ、活動的な印象を付与するわけです。

一番右側の写真は、このジャケットの裏にあたります。フラッシュの加減のせいか、随分色目が変わって見えますが、同じお洋服です。昼間、室内での見栄えは、一番左側の色合いが目視に近いと思います。…写真は相変わらず苦手で、とても難しいものがありますね。

08/04/24

普通の服

久しぶりに自分用の服を作りました。流行に注意したのは肩の部分、それ以外は自分用ですから好みです。「ハウス・スタイルは」と尋ね頂くこともあるのですが、当店にはありません。強いて言えば店主の好みがあり、あくまで個人的好みでもあります。

用語で書きますと、絞りのあるラインで、柔らかめの構造。裾は現在から見れば小さく感じますが、いわゆるラウンド。2個ボタンで襟巾は肩幅の半分、Vゾーンは丈の中央辺り…。家人や職人さんとの間では「普通の服」と呼ぶこともありますし、面白みのない服とも言えますが、好みだけからすれば、やはりこういう服が好きだったりします。

二番目は一番左のものを同じ洋服を斜めから。肩は構築的です。本当の好みはもう少し柔らかいナチュラル・ショルダーですが、やはり多少は流行を勘案しないと面白くありませんので、若干ビルドアップにしました。

一番右のものは左二着と異なります。写真を沢山なくしてしまい、探しまわっていましたら、2年前の1月にお作りしたお洋服の写真が出てきました。ラペルが広く、ハイ・ゴージでVゾーンが浅い3つボタン中掛け段返り、若い方に似合う要素が強く入ったスタイルです。たかがスーツ、されどスーツ、婦人服やカジュアルと比べれば小さな変化かもしれませんが、印象はとても変わります。

08/03/13

仮縫い (タキシードとジャケット)

今回は仮縫いです。仮縫い、しかもタキシードの仮縫い写真を掲載する機会はあまりありませんので、ちょっと載せてみました。二着はタキシード、一着は通常のジャケットです。タキシードは新郎へのお仕立てです。レンタルでは体に合わなかったり、あまりと言えばあまりな仕立ても多い上、やたらと派手です。新婦のドレスを邪魔しているような気もします。

ショールカラーでは通常用途で使い回しができず、その意味で高価ですが、随分と良い新郎の雰囲気が出ると思います。また、新婦をとても引き立たせます(もともと男性礼装はそういうものです)。

パーティに出られることが多い方は、一着良いものを持たれると非常に重宝すると思います。少なくとも在京業界の方なら必需品かもしれませんね。私の場合、三重の片田舎ではパーティに出ることは滅多になく、もう新郎になることもありませんから、シルク/ウールで光沢の強いもの、ピークラペルの一つボタンでジャケットを自分用に作っています。

替えズボンにコールパンツ、更にグレーのベストと合わせれば昼間の礼装に、共生地の替えズボンと合わせれば夜間礼装に、色々と着回しているのは秘密です。

08/02/28

40年前のノーフォーク

これは直近のものではなく、40年ほど前のものです。友人から注文を貰い、初めて私が裁断し、父が縫製したノーフォークです。友人はこの服で奥さんにプロポーズをしたり、とても書けないあれこれのお供に使ってくれました。

見事に着倒してくれていますが、これからも来てもらえるようで、修理にと出戻ってきました。ありがたいことです。もう修理は完成し、友人の元へと帰っていきました。

今から見ると何だか恥ずかしい感じがします。短期間で掲載を止めて置くつもりでしたが、このまま掲載することにしました。

ちなみにこの店ネームは2代目、今のものは3代目です。初代は漢字で出来ていました。何だかつい最近まで、このネームを使っていたような気がしますが、今のものに変わって、いつのまにやら20年立ちました。

Zegna Soltex

I様からお写真を頂きました。20代のお客様で、水泳選手だったためか、大変スタイルの良い方です。ビジネス・スーツが決まっています。生地は Zegna, Soltexで、ウールなのにウールらしくないという不思議な風合いを持つ生地です。ネクタイとジャケットのコーディネートに清潔感のある着こなしですね。

…イイですねぇ。女性のお客様、大変申し訳ございませんけれども、この方は残念ながらご成約済みです。

コーデュロイとコットンパンツ、ちょっと変わったシャツ

N様からお写真を頂きました。トータルなコーディネートが素晴らしいですね。靴を含めて大変バランスがとれています。しかし、お写真を頂く方、頂く方、皆様着こなしやスタイルがよく、喜ぶべきか悔しがるべきか、何とも悩んでしまいます。

ゼニアのコーデュロイ、カシコ(Cashco)です。このコーデュロイは畝が面白く、山と谷で糸色が違います。そのため普通のコーデュロイにはない深みが出ます。パンツは Plain Cotton。今回は特に奥様のお許しを頂き、掲載させていただきました。大変有り難うございました。

シャツも当店でのオーダーです。このデザインはN様のご指定によるもので、大変面白いデザインをしています。

KnickerBockers

「ニッカーボッカーズ」はご存じでしょうか。なかなか照れくさいですけれども、写真は店主です。このジャケットは以前にご紹介した“ハリスツイード”のジャケットです。それに黒のキャスケット帽と黒のタートル・ネックを合わせています。今でも根強い人気のある伝統的なカジュアル・ウエアですね。

ニッカーボッカーズ、人気はあるのですが、既製服として扱えるだけの流量はありません。そのため、一般的に既製服でのニッカーボッカーズは韓国などで海外生産され、比較的高価になります。しかも生地や柄のデザイン選択肢は殆どありません。カジュアルで趣味に走りたいにも関わらず、これではつまりません。

そこで、古くなったズボン(特に2タック)を“修理”という形でニッカーボッカーズに作り替えられてはいかがでしょうか。

当店でのお作り替えに限らず、ニッカーボッカーへのお作り替えは、一昔前のなるべく太目のものの方が見栄えがするように思います。ウェストはぴったりで、太いズボンがお作り替えには理想です。

ゼニア ジャパンにて

この写真、左端が店主、中心の方がゼニア・ジャパン社長、右端の方がゼニア本社テキスタイル部門総責任者です。研修会に招いて頂いたのですが、お恥ずかしいことに、私だけがノーネクタイで、いい加減な姿。両氏はばっちり決まっているのに…。

完全に場を読み間違え、お恥ずかしい限りです。多くの同業者との懇親会もあり、楽しく時間を過ごしてきました。