クラシコデザインの最終形

コンケーブ・ショルダー

大晦日からお正月にかけて、一体なんの番組を見ていたのかは忘れてしまいましたが、その中でお笑い芸人の方が出ておりました。驚いた事に、コンケーブ・ショルダーで、極めて細いシェイプ・ラインのスーツを身につけていました。これはピエール・カルダンに代表されるデザインで、以前流行の予測をしましたが、見事に当たってしまいました(当てるつもりだったのですが、いざ当たるとやっぱり少しびっくりです)。

芸能人の方々は流行を相当早く取り入れますし、また同時に流行を作っていくものですが、そのような方がこのようなデザインの服を着るというのは、クラシコ・スタイルの流行が最終地点まで言ったという事でしょう。

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コンケーブ・ショルダーについてですが、これは右の図を見比べてみてください。上がクラシコ・スタイルです。下は名前は特に付いていませんが、トレンド・スタイルと仮に呼んでおきます。

肩の所をご覧下さい。上をストレート・ショルダーと呼びます。肩が普通に真っすぐ流れていると思います。他方、下をコンケーブ・ショルダー(concave=凹面)と呼びます。上に比べて肩がえぐれたように凹面を作っていないでしょうか。腕の付け根が明らかに盛り上がっているのも特徴的です。

ピエール・カルダン的なデザイン

その他、このようなデザインの特徴は全体的に凹面を多用している点にあります。肩だけではなく、太線でなぞった様に全体が凹面で、釣り鐘のようなラインを持っています。

このデザイン図では、更にラペル(下襟)が襟に合わせて反ったようになっていないでしょうか。このような反った刻みをセミノッチと呼びます。

このようなデザインは、クラシコに特有の細身で体にぴったりした線を更に強調する意図を持っています。またラペルを反らせる事で、襟を大きく見せています。クラシコでは、一般にネクタイや襟幅を大きくして、細さを強調する事が多いのですが、それを更に極端にしたデザインになっています。

またポケットの蓋(雨蓋)が、ありません。胴の部分のディティールを減らし、重心をクラシコよりも更に上に持っていっていますから、クラシコよりも細さが強調されます。

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このデザイン図は未だピエール・カルダン的なデザインへ移行する過渡期のものと言えるでしょう。釣鐘型のシェイプラインを強調するため、ラペルが点線部分の様に膨らんで丸くなるデザインへ進む可能性があります。

クラシコ・スタイルの終わり

クラシコ・スタイルというのは体の線の細さや、体にぴったりとあった線を出す事を目的としたデザインです。その特徴をこれ以上押し進めた例は、このコンケーブ・ショルダーを採用したデザイン以外に過去には現れた事がありません。ですから、このデザインが芸能界などで現れたという事は、クラシコ・スタイルの一つの最終形が訪れたということになるでしょうね。

ただ、極端で明確な主張を持ったデザインというのは、飽きられるのも早いものです。ですから、このデザインを目にする様になったという事は、あと2〜3年で、クラシコ・スタイルそのものが流行から離れ始める前兆と言っていいのかもしれません。

2003 01/13