オーダーの世界ではあんまり存在しない

本当に長く間が空きました。ご無沙汰を致してございます。今回はあんまりオーダーの世界では存在しないコートにつきまして。

ダッフルコートってありますね。厚手のざっくりした生地を使い、一般的にはカジュアルコートで、あまりオーダーに馴染まない印象があります

フード袖付け襟

コンセプトは「清貧で実用」。ダッフルコートは海軍服と言われていたりしますが、もともとは僧服の一種で、主たる用途は防寒です。僧侶は清貧が要求されるので、華美な服はもちろん、何着も持って使い分けということにも馴染みません。冬でも朝から晩まで厳しい寒さの中で同じ服を着続けます。僧侶としての作業もこなさなければなりません。それに耐える必要があるので、そのまま戸外で寝ることさえ想定して、強く厚手のざっくりした生地を使います。

ところで、ダッフルコートにはフードがついていますが、このフードを「満足に使えた」記憶がある方ってあるのでしょうか。大抵の場合、風を正面から受けたらあっさりと捲れ上がります。首で止めようにも、大抵の場合、キツすぎるかゆるすぎて使えません。ならば使わない

本来は非常に実用的なコートであるにも関わらず、これが、あまり実用的でないファッション性優位のカジュアルだと思われてしまっているのは「そもそも安価なカジュアルなりに」作ってしまっているためかもしれません。似たようなデザインではあるのですが、本来のダッフルはかなり印象が違います。

生地も500g/m2超で

紺のパイル生地グレーのパイル生地

ということで、今回のコートは生地も織密 500g/m2 超のウール, 紡毛のパイル生地を使います。頑丈極まりない生地です。フード部分は取り外しできませんが、オーダーですから「キツすぎて/ゆるすぎて」使えないということは生じませんので、取り外しの必要もありません。清貧なので襟は詰襟でとにかくシンプル。

カジュアルでへたれば捨ててしまうようなダッフルではなくて、徹底的に実用的、修道僧のように質素でそのまま包まって防寒してしまえるようなダッフルを目指しています。

...なんというか、欠片も時流に乗っていない気がしますが、偶然、極めて懐かしい頑健なパイル織物を見つけてしまい、どうしても作ってみたくなってしまいました。東京への展示会にお持ちする予定です。どうぞお気軽にご覧頂けましたら幸いです。

2015-08-13