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余り面白くない合いの手

余り面白くない合いの手

今回は久方ぶりに服の話を離れまして、ちょっとした雑感です。

最近、テレビでも新聞でもラジオでも、右を向いても左を向いても不景気不景気の大合唱です。先の失われた10年が終わったと思ったら、また難儀なことです。先の10年でも盛んでしたが、不景気の大合唱に混じって「大企業のせい, 政治家のせい, 公務員のせい, 銀行家のせい」といった合いの手も盛んに聞こえます。今回のこの合いの手につきまして。

以前、ちょっとした集まりがあって顔を出して来たのですが、やっぱりそこでも「公務員が, 政治家が, 政府がどうこう」という話が出て来ました。お酒も入り、何か言えと言われたものの、見事に何も思いつきません。とりあえず「アメリカが悪い」と言っておきました (かなり便利に使える言葉です)。

私は政治経済にかなり冥いですから、誰が正しく誰が悪いのか、さっぱり分かりません。よもや「国よ滅べ」と仕事をする方は誰もいないでしょうから、政治家さんや公務員の方を信用します。第一、片田舎の仕立屋と「天下国家, 世界経済」なんて大それた議論が似合う訳もないってもんです (詳しい方からお話を伺うのは大好きです)。政治行政はそれぞれ専門家の方を信用します。

恐ろしいのは裁判員制度。今回、運の良いことに通知は届きませんでした。裁判!、どう考えても無理な代物です。家人に聞いたところ、死刑を含む重大な事件に関わるそうで、そんな判断は全力で逃げたい代物です。「裁判官, 弁護士, 検察を信用するな」と言われても、そいつは甚だ困ります。義務と言われれば諦めますが、相当ご免被りたい義務です。

お医者を信用するなとも言いますが、お医者を信用しなければ誰を信用したものか?。一々自分で医学書をひっくり返すわけにもいきませんから、甚だ困ります。掛かり付けのお医者に逆らっても良いことがありません。掛かり付け医の先代は「下痢が酷くて辛い?、点滴も薬も要らん、ポカリでも飲んで寝てろっ」という軍医のようなお医者でしたら、逆らわないのが得策ってもんです。

私の地元は漁港です。そのため、魚には少し目が届きますが、よもや本職のお寿司屋、魚屋さんに敵うわけもなく、美味しいものが食べたければ馴染みの親爺を当てにします。それを当てにするなと言われても…。

この「~のせいである」との糾弾のお陰で、責任が「こっち側」に来すぎているような気がするのは、気のせいなんでしょうか。裁判員制度で法曹三者を信用するな = 責任は裁判員にある!。政治家を信用するな = 責任は国民にある!。医師を信用するな = 責任は患者にある!。…実に困ります。

ところで、服飾の世界は形のある部分と形のない部分で出来ています。「野暮,粋だね」は形のない部分、「着心地, 丈夫, 質感」は形のある部分です。価格も一定しません。3年前の5万円が今年の5千円なんてことはしばしば起こります、完全にナマモノです。そのため、他の業界に比べれば、かなり嘘や欺瞞、横着が蔓延しやすい世界と言うことになります。

従って、全ての服飾雑誌、全てのテーラー、全ての小売店、全ての専門店を信用してはいけません!。百貨店を信用するなど勘違いです、服飾業界の人間である以上は信用してはいけません!。まして、当店の店主やこのサイトに書いてあることなんて、絶対信用してはいけません!。この業界にいる店主が言うのですから間違いない!。

…というべき帰結ですが、何だか非常に狂気な感じがします。そうやって書いてしまえば、こちらは全て責任を免れて「全てお客様の責任です」と言えますが、それで果たして専門家/仕立屋と言えるのか、まるで釈然としません。

「~のせいである、~が悪い」というのは、どうにも面白くありません。業界内では色々と言いたいこともありますが、他の専門家の方に言うのはお門違いというもの。やっぱり仕立屋は服のことだけ考えていた方が世の為です。

お百姓は良いお米を、漁師は良い肴、米屋魚屋は良く目が届き、仕立屋は良い服を作る。大企業でもきっと誰もが専門家です。政治家は国民のため、公務員の方は国や自治体のために働いて、それで喰えないなら、そんな世の中など願い下げ、寝て暮らした方がきっとマシだと思うこの頃です。

さて、今年はどんな服をお仕立てしましょう。
新柄生地を待つ間、旧柄生地を矯めつ眇めつしています。
今年は何点か、かなり良い旧柄が入って来ました。
どう料理してやりましょう。