今季の傾向を極端にした生地

スーツ地とジャケット地

今季の生地の特徴は、恐らく生地全般としては低価格化,軽量化で、Zegnaに見る限りはスーツ地で「シャリ感/清涼感, ストライプ」です。ということで、これらを極端にした生地を仕入れてみました。

Scabal Imperial Mohair

Scabal Imperial Mohair

scabal01
graph01

一点は、"Scabal Imperial Mohair"です。Scabalは世界中の富裕層を直接ターゲットにするような生地ラインナップを持っており、この生地も参考生地上代 (Scabal希望の一着分小売価格) が700,000円にもなる、かなり強烈な生地です。本来なら、片田舎の小規模テーラーが取り扱う生地ではありません。

…入ってきてしまいました。それもかなり安価に。構成と当店の生地価格は以下のようになります。

Composition g/m2着分のみ(3.2m)
60% Summer Kid Mohair, 30% Super 130's Wool, 10% Cashmere 220¥210,000

通常、生地の価格は、価格が一定レベルを超えると、価格に対する品質の上昇が非常にゆるやかになります。最終的には一部の数寄な方以外、見分けられないレベルの差が、非常に大きな価格差を生むことになります。

これは、その少しの差を出すために、膨大な手間や希少素材を使うためで、やむを得ないところがあります。ただ、あまりに高価であると「それは果たして紳士服なのだろうか」という気もします。

かと言って、安価に入っても素直に喜べず、「この値段だと、メーカーの人は悲しむかもしれない」という気もします。少し複雑な気分です。今年はこの種の出物が何点かあるかもしれません。

scabal02scabal03scabal04

220g/m2と、夏服としては薄く,軽い豪奢品の部類に属します。シャリ感/清涼感は勿論のことながら、滑らかさも兼ね備えており、抜群の風合いを誇ります。光沢にも富みますが、非常に無理のない印象です。

ニットでタイトなジャケット

Three Stars Tex - Knit

knit01
knit02

今季のもう一つの傾向は、柔らかい非造形/構築的なジャケットに向く素材があるように思います。これを徹底すると、多分ニット素材です。ニット素材は毛糸のことではなく、編み組織の生地の総称です。非常に伸縮性に富み、タイトなシルエットを要求されがちな婦人服では多用されます。

しかし、紳士服では非常に珍しい素材でもあります。ということで、メーカーさんに直接尋ねてみましたところ、少し面白いものを入手することが出来ました。素材の特性上、安価でもあり、遊びのジャケットを作るには最適かもしれません。

ただ、まだ今季はやはり少数,特殊で、正規のラインナップではありません。そのため、あまり色柄も良いものがありませんが、今年一年かけて色々と裁断,構造を試してみたいと思います。

取りあえず、中胴の上がり寸,実寸を同寸にした無茶なジャケットを試作しています。多分、最初の出来はあまり良くない可能性が高いと思うのですが、完成次第、またサイトに掲載したいと思います。(東京にもお持ちしたいと思います)。

2010.2.6