フォーマル説明1(タキシード)

フォーマル説明1(タキシード)

Tuxedo, Smorking,
Dinner Jacket

タキシード

フォーマルの基本的なポイントについて書きたいと思います。初回はタキシード(tuxedo)。

タキシードは燕尾服の代用として着用される夜会服です。形は背広に似ていてラベルを絹や繻子(satin サテン)で覆います。生地は大抵が黒羅紗(黒いウール地のこと)を使い、パンツ側面には飾縁があります。一般的に黒の蝶ネクタイと合わせて着るので、通称ブラック・タイ。

タキシードという言葉が一般に使われていますが、この言葉は英国の発祥ではありません。アメリカ発祥です。19世紀末ニュー・ヨーク州タキシード公園のクラブ会員たちが着始めた事に由来していたと言われています。つまりアメリカ由来の言葉です。英国ではディナー・ジャケット(dinner jacket)と呼んでいます。

cut

手抜きの絵で申し訳ないですが、裾の折り返しはシングルです(シングル=折り返さない)。ダブルは遊びで汚れることを避けるためのもので、つまりカントリー由来です。山野で遊ぶための服の特徴を、夜会服であるタキシードには使えません。

裾はモーニング・カットにします。モーニング・カットとは、足の甲側より踵側を2cm程長くすることです。パンツと靴の隙間がなく、ぴったりとしているので立ち姿が流麗に見えます。以前に10代に流行したかかと踏みの対極です。

襟元

collar

シャツは左のウィング・カラー(wing collar)がタキシードの伝統です。これに黒のボウ・タイ(bow tie)、つまり蝶ネクタイをしめます。ネクタイの素材は襟と同じ、絹か繻子が良いでしょう。しかしやっぱり最近の礼服は融通が利きますから、レギュラー・カラー(右)のものでも構いません。

ところで、カッター・シャツは某日本企業の商標名です。カラーとカフスが縫いつけられた長袖のシャツのことを言い、もとは運動着ですが、今ではワイシャツと同じ扱いです。ワイシャツ(Yシャツ)も実はホワイト・シャツの転用で、ホ「ワイ」ト+シャツの当字です。

lapel

ラペルはショール・カラー(左)が普通です。モーニングもショール・カラー。ただ、最近では細かいことは言いませんからピークト・ラペル(右)も構いません。ピークト・ラペル(peaked lapel)とは「尖った襟の折り返し」という意味です。ピークト・ラペルにするとディティールが増えるので体型が小さく見えます。

これはデザインと体型の見え方にも関わります。ピークト・ラペルにすると細く見えると言うことは、恰幅のいい人はピークト・ラペルが似合い、細身の人はショール・カラーが似合うと言うことです。

靴はエナメルのものを履きます。ピカピカですから女性のドレスの裾を踏んでも汚しません。女性がドレスを着る事を前提にしていますから、夜のパーティ、上流階級の御用達、と言えますね。ナチスのヒトラーもベヒシュタイン婦人からプレゼントされて、「ブルジョア」と非難されたのに絶対に脱ごうとしなかったと言われています。それくらい夜会(パーティ)と富の象徴のようなものです。色は黒が大原則です。

カフリンクスなどはブラック・オニキスを金・銀で縁取ったものが原則なんですが、どうしてそうなのかはわかりません。それが原則だということです。ポケット・チーフ(胸にさすハンカチ)の材質はシルクで。テール・コート(燕尾服)はリネン(亜麻)素材のチーフをさしますから、格下のシルクが良いです。

どうでしょう。タキシードがどういう服か、少しでもイメージできましたでしょうか。細かいところを書き続けると、終わらなくなってしまいますから、今回はこの辺で。

2002