夏服の色々

クール・ビズ

御座白浜海水浴場
ウィキメディア・コモンズ

goza

体型だけで評価される世界

bare

本当に久しぶりの更新になりました。ということで、今回は軽い更新です。クール・ビズにつきまして。相変わらず夏も終わりに近いのに夏服の更新です。手遅れ感 満載です。このクール・ビズ、そうなるんじゃないかと思っていましたが、やっぱり極端に二極化したように思います。

海水浴場では良い裸 = 良い姿

クールビズは要するにカジュアル化の押し進めです。裸に近づくスタイルの推奨とも言えます。「今の男性夏服はハンサムで体型の良い人しか似合わない」と、既製服業界の専門家さんがボヤクのを見掛けたりもしました。

そりゃそうです。街中が海水浴場になったと思えば良い訳です。海水浴場ではセンスもへったくれもありません。「生身の肉体」が全てです。シャツに綿パンでは、こうなっても仕方ありません (Tシャツやランニングを認めれば、その傾向は更に強くなります)。

センスが試される

他方、クールビズでドレスコードが緩和されましたので、涼しい綿/麻系統の生地や、シャツジャケットの類も許されるようになりました。こちらはこちらでセンスを試されます。スーツと異なりデザインや色柄の選択肢/組み合わせが無闇と広いためです。

結果、気を使う方と気を使わない方の落差が極端になってしまいました。方や抜群にシャレていて、方や制服姿の学生さんにも劣る、といった寸法です。実はハードルが高くなりましたから、高島屋さんがクールビズの「お影で」売上げが増えたというのも宜なるかなというものです。当店でもクール・ビズ関連でご相談を頂くことが多くなりました。

二極分化は東京の方が激しいのかもしれません。東京は何とも不思議なところで、衣服の系統で社会的な立ち位置が表現されているような気がします。人は異なる系統の衣服のところに混じって行きませんし、町によって衣服の系統が違っていたりさえします。地方でも二極化を感じるのですから、一度、盛夏の東京へ行ってみたい気もします。

とりとめもなく夏服色々

ということで、今回は夏服の色々につきまして。ドレスコードが甘くなっていますので、色んな服を着けられるようになりました。以前にも書きましたが、これはこれで楽しい状況です。クールビズに良いと思われるような、今までにお仕立てしたお洋服など、新旧取り混ぜてのご紹介です。

ニット・タイ

RIMG0001RIMG0002

良く知られているのに、あんまり着けているところを見掛けないネクタイ、ニット・タイです。最近、専門店でも豊富に見掛けるようになりました。ニット素材のネクタイです。ウールとコットンのものがあり、夏はコットン素材のものを使います。年配の方にはお馴染みですが、若い方には馴染みの薄い方もあるかもしれません。

通常、ニット・タイは剣に当たる部分が直角になっているものが一般的ですが、相変わらず面白い提案をするZegnaは、ちゃんと通常のネクタイのように大剣/小剣があるものを出しています。シルクのネクタイと異なり、表面に凹凸があるため起伏感が強く光沢もありませんので、ニットとはいうもののかなり涼しげです。また、カジュアル感が強くなります。クール・ビズには似つかわしいタイです。

ウール+シルク, リネンなどの混合素材 /12ss

夏と言えばシルク, リネン, コットンなどの素材が涼しさとしては理想的ですが、シルエットの保持力に乏しかったり、皺が出やすくなる欠点があります。そこで、その兼ね合いとしてウールに混合する素材が豊富にあり、元はこちらが一般的でした。ウールベースとは言うものの、植物系素材の風合いが強く出ます。【大きい写真

この洋服は今期(12SS)、お客様にお仕立てしたお洋服です。ちなみに、フラワーホールから伸びているのは、ボタンを無くさないように結びつけたものです。

RIMG0014RIMG0013RIMG0015

麻100% /12ss

麻というと、白か生成りを連想する方が多いと思うのですが、実はグレー+ストライプといった、ウール系のスーツに良く似た色柄もあったりします。この写真はスーツです。麻はジャケットでも快適ですが、本当に快適であるのはズボンの方だったりします。ですから、夏場のスーツに向きます。【大きい写真】。これも今期(12ss)、お客様にお仕立てしたお洋服です。

どんな素材でも「肌の上に汗の玉」が出来た段階で、吸湿/蒸発の上限を超えたことになり、最も暑くなります。ズボンは肌に直接触れます。そのため、汗の玉ができた瞬間から不快極まりないことになりますが、麻のズボンではまずそんなことは起きません。生成りや白に抵抗がある方は、こういう生地を探されると楽しいかもしれません。

RIMG0085RIMG0086RIMG0087

Silk 100% /12ss

こちらはスーツではなくジャケットです。ジャケットですから、白地になります。シルク・サッカーは非常に軽い生地で、ジャケットとしては最も取り回しの良い部類だと思います。便利に使うのに最適なジャケットです。

昨今ではクールビズの要請が非常に強いものの、それでもクーラーが効いたところに移動することは良くあります。特に遠方に外出する際や、旅行など消費地で顕著です。そういった時、簡単に羽織ることができますので、カジュアルにもかなり便利に使えます。人台よりもかなり大きい服なので、その点、含んで頂けましたら幸いです。【大きい写真

RIMG0113RIMG0115RIMG0114

裏の写真に好評を頂きますので、こちらにも載せてみました。これは確かに夏服ならではです。既製服では裏にパイピングなど、こういう細工は乏しいですから、オーダーならではと言えるかもしれませんね。大きい写真は上記の写真にそれぞれあります。

RIMG0093RIMG0127

大昔の麻服 / だいたい40年前

これは当店にあって、実際に着用もしている最も古い麻服です。20代の頃に作ったものですので、凡そ40年前の手縫縫製。元はスーツでした。15年ほど来て、15年ほど寝かせて、また10年近く着ています。捨てろと言われたり、自分でも捨てようと思ったりしながら捨てられず、ついには家のものが着けるようになってしまい、未だに現役です。こういう着古した風合いは最初から出すことが難しいので、どうしても捨てにくくなってしまいます。【大きい写真

襟の裏側はもうぼろぼろで繊維が溶けてきています。裏地は破れて継ぎが当たっています。クリーニングに出していたのは最初の数年ほどで、その後はずっと洗濯機で丸洗いです。生地と縫製さえ耐えるものであれば、麻服はかなり強靭です。問題は、現在この手の「耐えうる生地」が本当に少なく、また、面白みのある麻生地が乏しいことかもしれません。

RIMG0201RIMG0202RIMG0203

一つだけどうしても気に入らないこと

前にも書きましたが、クールビズで提唱された理念には全く賛成しないものの、クールビズそれ自体は被服の多様を認めると言うもので、それ自体は別段、何の不満もありません。ただ、行き渡った現状、どうしても一つだけ気に入らないことがあります。

強制です。空気を読んで合わせる、ということが大事であるのは当然なのですが、その空気を読むのは「読む側の裁量」である筈です。以前、ある仕立屋さんが、お役所にジャケット+ネクタイのスタイルで依頼講演に出向いたところ、「ジャケットを脱いでください、せめてネクタイだけでも」と言われてしまったそうです。

仕立屋に何の講演を頼んだのかはいざ知らず、出入りのものに軽装を要求するというのはどうなんでしょうね。正直なところ、ほっといてくれと思います。「軽装をしている人が後ろめたさを覚えないように」という理屈であるのなら尚更に不快です。この強制のようなものには、それがほの見えますから、何とかして欲しいと思うところです。

2012.08.13