ネクタイの価格差15倍の謎

¥1,000 ~ ¥15,000

ネクタイの合わせ方はさておいて、取りあえずネクタイの謎から・・・。ネクタイには¥1,000から¥15,000までの価格差があります。この価格差、少し不思議ではないですか?。

私は桃が好きで夏になるとよく買うのですが、私が見た最も高い桃でも一個400円、普通は80~100円で買えますから、4〜5倍の価格差しかありません。しかしネクタイの場合は実に15倍の開きがあります。スーツほど素材や縫製に関する工程や技術があるわけでなし、有り体に言えば無用の長物であるばかりか、首を絞めるのに最適なこの危険な布の価格差は何処から来るのでしょうか。

理由は簡単です。
ネクタイの価格は素材や縫製ではなく、デザインによって決められているからです。デザイン7割、素材・縫製3割という所でしょうか。

Zegna Twin Tie

tie

右はかのイタリアの雄、ゼニアのネクタイです。この商品「ツイン・タイ(TWIN TIE)」と言います。大剣と小剣が同じ大きさになっており、ちゃんと結べば大剣と小剣の柄が合うようになっています。これは大変センスが良い。(日本の帯もこの様な作りをしていますから、和服を付けられる方には当然のデザインかも知れません)。これに1,000円のネクタイを比べて見ようと思ったのですが、私共の店舗には置いてありません。量販店にゆけば幾らでもありますから、そちらを見て頂くとして、さて違いは何処にあるのか。

最初に書きました様に違いはデザインだけです。それ以外に大した違いはありません。デザインが古かったり、野暮ったかったり、いかにもプリントという安っぽさだったり、これらの理由、「デザインの悪さや古さ」が、そのネクタイを1,000円にしてしまうわけなんですね。

そもそもネクタイはアクセサリーの意味合いしかありません。もともとは兵士が防寒のために巻いたり、弁士が喉を守るために巻いたりと、結構実用的ではありました。しかしフランスのルイ14世がクロアチア兵士の首飾りをまねたのが、アクセサリーとしてのネクタイ直接の淵源だと言われています。この時に呼ばれていた名前はクラバット。これがイギリスに渡り、ネクタイという名前に。Neck Tie 「首に結ぶもの」です。

この様に現在のネクタイは100%アクセサリーですから、その存在意義はデザイン性以外にはあり得ません。ですから、このネクタイの価格が、殆どデザインの価格であるのも当然というものなんですね。

日本はハードは強いがソフトは弱いと言われます。ネクタイも同じで、西欧ではネクタイの柄一つが、億単位の価格を付けることもあります。日本では雇われデザイナーが、何本デザインしても月給幾らの世界です。日本のデザイナーが世界に互せないのは、西欧と日本のデザインに対する評価の違いにも理由があります。こんな所にもハードに強くソフトに弱いという国民性が現れていると思うのは私だけじゃないと思います。